ここにきて新国立の話題が世間でも大きな話題となっています。今の案で行けば、ラグビーW杯では、新国立競技場で開幕戦や決勝を行う予定ではあります。ですが、2,520億円という建設費を考えると、そこまでして建設する意味があるのか、あるいは建設費が下げられないかというのも大いに検討しないといけないと思います。
参考→新国立競技場の建設費が高いのはラグビーW杯のせいなのか?
ところで、ラグビーワールドカップで新国立競技場が利用できなくなるとした場合、2019年開催のラグビーW杯は開催できるのでしょうか。そのあたりをシミュレーションしてみました。
ラグビーW杯とは?
その前にそもそも論ですが、ラグビーW杯とは何でしょうか?
ラグビーW杯は、ラグビーの世界一の国を決める4年に1回の大会。第1回は1987年にオーストラリアとニュージーランドで開催され、4年ごとに開催されています。
今年2015年も第8回ラグビーW杯、イングランド大会が9月に開催されます。現在の参加国は全20か国。まずは5チームが4つの予選プールに分かれて試合を行い、上位2チームが決勝トーナメントに進出。決勝トーナメントは8チームで頂点を争います。
2019年に開催されるラグビーW杯は9回目。これまでの開催地や優勝国は以下の通りです。
年度・回数 | 開催国 | 優勝国 |
1987 第1回 | ニュージーランド オーストラリア | ニュージーランド |
1991 第2回 | イングランド | オーストラリア |
1995 第3回 | 南アフリカ | 南アフリカ |
1999 第4回 | ウェールズ | オーストラリア |
2003 第5回 | オーストラリア | イングランド |
2007 第6回 | フランス | 南アフリカ |
2011 第7回 | ニュージーランド | ニュージーランド |
2015 第8回 | イングランド | ? |
2019 第9回 | 日本 | ? |
2019年ラグビーW杯のシミュレーション
さて、では2019年のラグビーW杯を新国立競技場を使わずに行うとどうなるかシミュレーションしていきたいと思います。
2019年ラグビーW杯の開催会場
まず、現時点で2019年のラグビーW杯の開催会場をみておきましょう。
全部で12会場となります。
札幌市 | 札幌ドーム | 41,983人 |
岩手県・釜石市 | 釜石鵜住居復興スタジアム(仮称) | 約16,187人 |
埼玉県・熊谷市 | 熊谷ラグビー場 | 24,000人※ |
東京都 | 新国立競技場 | 80,000人 |
神奈川県・横浜市 | 横浜国際総合競技場 | 72,327人 |
静岡県 | 小笠山総合運動公園エコパスタジアム | 50,889人 |
愛知県・豊田市 | 豊田スタジアム | 45,000人 |
大阪府・東大阪市 | 花園ラグビー場 | 30,000人※ |
神戸市 | 御崎公園球技場 | 30,132人 |
福岡市 | 東平尾公園博多の森球技場 | 22,563人 |
熊本県・熊本市 | 熊本県民総合運動公園陸上競技場 | 32,000人 |
大分県 | 大分スポーツ公園総合競技場 | 40,000人 |
※熊谷と花園は今後改修予定なので現時点での収容人数を記載しています。
ラグビーW杯開催における前提条件
ここでもう一つ押さえておきたいのは、各試合において、必要なスタジアムのキャパシティが異なるということです。
ラグビーW杯に必要なキャパシティは以下の通りです。
■試合カテゴリー
・開幕戦、準決勝、3位決定戦、決勝→6万人以上
・準々決勝→3万5000以上
・プール戦
カテゴリーA→4万人以上 ※ティア1同士の対戦、日本の試合
カテゴリーB→2万人以上 ※ティア1とそれ以外のチームとの対戦
カテゴリーC→1万5000人以上 ※ティア2以下の対戦
上記をふまえた上で、新国立競技場を抜いた11会場でW杯を行う場合、各試合で使えるスタジアムは下記の通りとなります。
まずは決勝トーナメントからいきます。
開幕戦、準決勝、3位決定戦、決勝(5試合)
横浜国際総合競技場
合計1会場
準々決勝(4試合)
横浜国際総合競技場
札幌ドーム
小笠山総合運動公園エコパスタジアム
豊田スタジアム
大分スポーツ公園総合競技場
合計5会場
決勝トーナメント
決勝トーナメントだけをみると、国立競技場がなくても一応可能です。ただ、準決勝2試合と、3位決定戦、決勝がすべて横浜国立競技場となります。通常、準決勝2試合は2日連続で、3位決定戦と決勝も2日連続で試合を行うため、芝が荒れた状態で決勝を行う可能性があること、本拠地としている横浜F・マリノスとの調整が必要ということくらいでしょうか。
ただ、芝は心配としても一応横浜国際競技場を利用することで、代替はできるかと思います。
参考ですが、今年のイングランド大会を見てみると、準決勝2試合と、決勝は聖地トゥイッケナムでの開催で、3位決定戦はロンドンのオリンピックスタジアムでの開催となります。(ラグビーは芝が荒れやすいスポーツではあるので、あまり連続で利用しない方がいいのは間違いないですが。)
なお、よく花園でやればいいじゃないかという意見を言う人もいますが、花園が6万人以上のスタジアムに改修すれば開幕戦・決勝など5試合に利用できますが、そうでない限り、花園では決勝などはできません。また、これも勘違いしている人もいるかと思いますが、花園もワールドカップの会場ですので、試合は行います。ただし、上記のカテゴリーの問題で決勝などは不可能になる可能性が高いということです。(6万人以上の規模にすればできないわけではないですが。)
また、埼玉スタジアムでやればという方もいますが、埼玉スタジアムはサッカー専用スタジアムのため、現状ではラグビー用のインゴール部分が足りず、ラグビーでは利用できません。ラグビーW杯で利用するには改修が必要になります。
さて、続いては予選プールを考えます。
予選プール
予選プールについては、現時点で参加20か国がわかりません。よって、ひとまず今年2015年イングランドでのW杯と同じ参加国、同じプールで試合を行うとして考えたいと思います。
またティア1の扱いですが、一般的にティア1といえば世界ランク1位-10位の国で、北半球6か国(イングランド・アイルランド・ウェールズ・スコットランド・フランス・イタリア)と南半球の4か国(ニュージーランド・オーストラリア・南アフリカ・アルゼンチン)を指しますが、どこまで入れるのかというのは定義はありません。今回はイタリアが現時点(2015/7/10現在)で世界ランキングが15位となっているので、イタリアは外して、9か国をティア1として扱うことにします。
プール戦は全40試合あります。開幕戦を除くと全39試合です。これをカテゴリーごとにわけると以下となります。
カテゴリーA 10試合
カテゴリーB 21試合
カテゴリーC 8試合
カテゴリーAに利用できる会場が準々決勝で利用する5会場、カテゴリーBで利用できる会場が釜石を除く10会場となりますので、こちらも問題なく開催できると思います。
最後に
というわけで基本的には新国立がなくてもラグビーW杯はできそうです。もし、これで行く場合は、World Rugby(通称WR)という、サッカーでいうFIFAのような組織に、変更を申し出て理事会での了承をもらう必要はあると思います。
このように協会が動くかはわかりませんが、新国立競技場がなくてもラグビーW杯は開催可能かとは思います。一方で、これでラグビーW杯が新国立競技場で開催されないとしても、プレオリンピックを開催するため、新国立競技場建設までの工期が縮まるということは考えられないかと思います。なのでラグビーW杯が新国立を使わなければ、工期を伸ばせるという認識は意味のないことだと理解しておく必要はあるかと思います。
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