2019年、ラグビーW杯日本大会が開催されました。テレビでもラグビーの試合を見る機会が増えてきたのではないでしょうか。ところで、ラグビーの日本代表の試合を見ていると外国人選手が多く、初めて見る方には、日本人選手が少ないのではないかと感じる方もいるかと思います。
2019年W杯の代表選手も外国出身の選手が多数選出されています。
今回はなぜラグビー日本代表には外国人選手が多いのか、そして、それほど多いのが普通なのかを考えていきます。
ラグビー日本代表の外国人選手
まず確認しておきたいのが、ラグビー日本代表には日本に帰化している選手も多いです。例えば、日本代表のキャプテンであるリーチマイケル選手は日本に帰化しています。
帰化している以上、日本人であるため、日本代表になっても問題ないでしょう。
ただラグビー日本代表には、帰化している選手だけでなく、それ以外の選手も多くいます。
2019年ラグビーW杯日本代表のメンバーも多くの外国人出身者が代表選手となっています。

なぜ他の選手は日本代表に選ばれているのでしょうか。
ラグビーにおける代表ルール
ラグビーにおいては代表に選出される際のルールが他のスポーツとは異なります。
覚えておきたいのがラグビーは、所謂「国籍主義」ではなく、所属する「協会主義」になります。普通のスポーツは国の代表=その国の国籍の選手になります。これが国籍主義です。
一方でラグビーは、それぞれの国にラグビー協会があります。ラグビーの代表はその国の協会代表という考えになります。つまり、ラグビーの日本代表は日本協会の代表選手ということです。
そのため、ラグビーでは国籍と代表が一致しない場合があります。もちろん国籍がある国の代表になれるのですが、それ以外に以下の条件を満たせば、国籍とは異なる国でも代表になるチャンスがあります。
その条件が以下の3つになります。
- 出生地が当該国である
- 両親および祖父母のうち一人が当該国出身
- 当該国で3年以上、継続して居住している
※なお、2021年以降は居住年数が3年から5年に変更される予定です。
このどれか一つを満たせば、その国の代表になれるわけです。一番多いのが「当該国で3年以上、継続して移住している」を満たしている場合で、日本にいる外国人選手の場合、3年以上継続して居住しているを満たしている選手が選ばれています。
過去にはある国で代表になった選手が、別の国の代表になることもありました。しかし、現在では認められていません。例えば、現日本代表ヘッドコーチであるジェイミー・ジョセフ氏はニュージーランド代表として活躍した後、日本代表としても活躍しています。かつてはこのように海外で代表を経験した選手が日本代表になることもありましたが、現在ではありません。
いずれにしても、ルールの上では現在の日本代表に外国出身の選手がいくらいても問題ないことになります。
他国の外国人選手の割合はどうなのか?
それでは日本代表以外を見てみましょう。
以下は2011年W杯時の各国の代表のデータになります。各国代表の中に外国出身の選手が何人いたかを表しています。
国 | 外国出身選手数 |
サモア | 15人 |
アメリカ | 12人 |
イタリア | 11人 |
日本 | 10人 |
トンガ | 9人 |
イングランド | 8人 |
オーストラリア | 7人 |
スコットランド | 7人 |
これらを見ると、日本だけが突出して多いわけではありません。外国出身選手が少ないわけではないですが、他国も同じくらいの外国出身選手が含まれています。
ちなみに、ラグビーは協会主義だと先に書きました。例えば、アイルランド代表は国としてのアイルランドと、国としてはイギリス連邦に属する北アイルランドの2つでアイルランド代表となっています。
日本はなぜ外国人出身選手が話題になるのか?
さて、これらをふまえると、日本はルールに則ったうえで、他国もやっているように外国人出身選手を代表に入れているわけです。
それではなぜ日本代表は外国人選手が多いと言われるのでしょうか。
大きく分けると2つの理由があるかと思います。
一つ目は、日本は、いくつか例外があるもののほとんど単一民族から成り立っており、外国人選手を見た目や名前から判別できるからでしょう。日本人から見れば、外国人選手は見た目やカタカナ名から判別できてしまいます。一方で、日本人から見た場合、日本以外の他国に外国人選手がいても、見た目では同じに見えてしまい、海外では日本のように外国人選手がいないように感じてしまうのではないでしょうか。そのため、日本だけ海外出身選手が多く、これでいいのかと感じる人が多いのではないかと思います。
また、もう一つとして、野球からくる発想だとは思いますが、「海外から来る選手=助っ人」という発想があり、スポーツにおいて海外から来る選手は日本人とは別という考えにつながっているのではないでしょうか。
ラグビーにおける考え方
上記の外国人選手=助っ人という考えは、確かに日本では一般的に広まっている考えですが、必ずしもラグビーに適した考えではありません。
そもそもラグビーにおける代表選出のルールを見ればわかりますが、現状他国で代表になった選手は日本代表として選出することはできません。
日本のトップリーグに多くの外国人選手が所属しており、彼らが「助っ人」となっているのは確かにあります。ただし、他国ですでに代表になっている選手は、日本代表にはなれないです。なので、海外から来る有名選手のほとんどは日本代表になることはできません。
現在、日本代表に選出されている外国出身選手を見れば、高校や大学から日本に来ている選手や、無名のまま日本に来た選手が多く、彼らは「助っ人」としてきたというより、日本にチャンスを掴みに来た、あるいはラグビーとともに日本の教育システムで育ってきた選手が多いです。
国籍との葛藤
そして、彼らにも自分の国籍があります。先ほどから書いているように、一度日本代表になれば、他国の代表になることはできません。それは、彼らからすれば日本代表になったからには、母国の代表になることはできないということになります。
母国の代表になるか、あるいは日本代表になるか、というのは多くの選手が頭を悩ませる問題です。彼らは、その葛藤の中で日本代表を選んでくれた選手になります。母国の代表をけってまで日本代表を目指してくれたのが今の外国出身選手たちになります。
日本人が他国の代表になることも
また、これまでは今日本代表にいる外国出身選手の話をしましたが、逆のことも可能です。つまり、日本人でありながらも他国の代表として活躍する、ということです。
例えば、日本人がNZに5年以上居住していれば、NZ代表であるオールブラックスに選出されることもあるわけです。もちろんその際に、NZ代表として活躍する道もあれば、日本代表を選ぶ道もあります。ラグビーにおいては、国籍、人種、民族の違いというのは関係ないという文化を持っているわけです。
それでも外国出身選手に違和感持つ人は・・・
これまで見てきたように、ラグビーにおいては、国籍主義ではなく、協会主義であり、国籍だけでなく、5年以上居住しているなどの条件を満たせばその国の代表になることができます。
そして、一度その国の代表となってしまえば、他国の代表にはなれません。これらをふまえると、多くの外国人出身選手が日本を選んでくれたことは感謝すべきであり、リスペクトすべき選択になります。
また、そのように外国出身の選手がいる国は日本だけでなく、ラグビーでは他国も含めて当たり前の考え方になっています。
ただ、それらを踏まえた上でも外国出身選手に違和感を持つ人はいるかと思います。日本的な考え方からすると、それも致し方ないかなという気もします。
ですが、そういう方には是非試合前の国歌斉唱の場面をご覧ください。外国出身選手とはいっても、君が代を歌い、試合に向けて全力を尽くそうとする姿を。
また、彼らがプレーする姿を見てください。それを見れば、外国出身だからとかそういったものを感じなくなると思います。現キャプテンはNZ出身のリーチマイケル選手ですが、高校から日本にやってきてプレーしている選手の一人です。
一度日本代表に選出されれば、日本代表にすべてをささげてくれます。彼らをしっかりと見てくれれば、外国人だから・・・というのは単なる食わず嫌いのようなもので、そういった考えはなくなると信じています。
コメント
いかに高邁な精神を語ろうとも、ライト層が抱く「日本代表」「ワールドカップ」のテンプレートに合っていない以上マーケティングの難易度は高いでしょう。
ルール解説動画の件も一緒で、正しい(と思う)ことは訴え続けてきたと思いますが、2019に向けて理解・共感が増しているようには見えません。
「他のスポーツ」で色のついてしまった用語は用いず「リーグ選抜世界選手権」とでも言ってしまえばよかった気もしますが、借用マーケティングでいいとこどりは難しいということですね。
また「国籍主義」だろうが「協会主義」だろうが、選手輸入での強化が流行するのは実力偏在の問題があるからで、卓球やバドミントンなどは普及・育成に悪影響を与える段階まで到達しているとの見方もあります。
それを抑制するのは普及・育成のよってキャッチアップしようとする後発国の意思(代表強化が唯一無二の目的ではない)と、それを援助する先発国(あるいはIF)の世界的普及に向けた意思だと思いますが、IRBは後発国への普及をあまり考えていない、むしろティア1国だけでサロン的にやれればいいという雰囲気を感じるところは日本ラグビーの辛いところですね。
>また、もう一つとして、野球からくる発想だとは思いますが、
>「海外から来る選手=助っ人」という発想があり、
>スポーツにおいて海外から来る選手は日本人とは別という考えに
>つながっているのではないでしょうか。
まあ確かに、「助っ人外国人」という概念は野球界発祥でしょうけども、
野球は、王貞治や張本勲といった伝説の名選手たちも、
日本には帰化していない、いわゆる在日の外国人ですし、
日本ハムで活躍する陽岱鋼のように、日本の高校や大学を卒業した選手や、
巨人などで活躍したラミレスのように、日本球界で8年プレーした選手は、
「日本人扱い(外国人枠から除外)」となっています。
そもそも戦前の日本代表にすら、亡命ロシア人のスタルヒン投手が居ましたし、
野球の世界大会であるWBCなんて、ラグビー以上に条件が緩いですから(笑)、
たぶん想像されてるほど、野球界は国籍への拘りが強くないですよ。
国籍に関心が向くのは、野球よりもサッカーの影響が強いと思います。
ラモス瑠偉、呂比須ワグナー、三都主アレサンドロ、田中マルクス闘莉王と、
多くのブラジル人選手が帰化して、日本代表で活躍しましたし、
サッカーは国籍で代表が決まる為、彼らは帰化する過程まで注目されました。
李忠成のように、日本生まれ日本育ちの在日選手も、
代表チームに入るには、帰化による国籍の取得が必要でしたからねえ。
そして、ラグビーはサッカーと兄弟であるが故に、余計に国籍が気になるのかと?
>そして、一度その国の代表となってしまえば、他国の代表にはなれません。
>これらをふまえると、多くの外国人出身選手が日本を選んでくれたことは
>本来感謝すべきであり、リスペクトすべき選択になります。
う~ん、この「わざわざ日本代表を選んでくれた」という見方は、
「なんで日本代表に外国人がいるんだ」という見方と、裏表の関係に無いですか?
両方とも、国籍に拘りがあるが故に、生じてくる感情ですよねえ?
日本人の日本代表選手に対して、同等の感謝やリスペクトを抱かない限り、
肯否は別として、やはり外国人選手に対して特別な感情があるって事ですから。
単に選手やチームとして見るのであれば、日本人とか外国人とか関係なく、
「この選手は、そのチームを選んだ」というだけの話でしょうし。
(´・∀・`)ヘー なるほど納得
やっぱり、9割が日本人で勝ったとか言うのじゃないと、がっかりです。戦争において外人部隊や傭兵で勝っても日本の勝利となる、というのとは違う気がします(他国が開発した武器でも勝ちは勝ちでしょうから)。箱根駅伝でも、外国人が主流だと、不思議な気がするし、相撲もモンゴル人が主流だと、相撲はもうやめた方が良いんじゃないかと思ったりもします。なんだか、この解説は言い訳だと思います。
[…] もう他の国の代表選手にはなれないということ。 […]
国際試合だから、やはり国籍が物をいうと思うんだけど。
出身地や父母がとか言うと本人の環境によるから単純に不公平だし。
たった3年の滞在でいいならハードル低すぎ。
選手を批難するつもりもことさらないが、一生懸命応援する気持ちにもならないな。
ラグビー以外でもこんな競技あるのかを考えたら異端ではあるよ。
要は、違和感感じる人らは民族主義なんでしょ?それも街宣右翼に近い、民族主義者。
いつまでたっても「あの人は肌が白い人」「あの人は肌が黒い人」「あいつは目が青い人」
ルールに則って他の国と同じことをしてるのに、日本は純粋に日本人であるべきっていうのは、日本の恥ずべき島国根性です。
結局は、違和感感じる人らは、今大会でラグビーを知ったエセファンであり、外国人を色眼鏡でモノを見る外国人ヘイトのヘイトスピーカーでしょ。