ラグビー日本代表にはなぜ外国人選手がいるのか?

W杯
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2023年、ラグビーW杯フランス大会が開催されます。テレビでもラグビーの試合を見る機会が増えてきたのではないでしょうか。ところで、ラグビーの日本代表の試合を見ていると外国人選手が多く、初めて見る方には、日本人選手が少ないのではないかと感じる方もいるかと思います。

2023年W杯の日本代表選手も発表されましたが、外国出身の選手が多数選出されています。

今回はなぜラグビー日本代表には外国人選手が多いのか、そして、それほど多いのが普通なのかを考えていきます。

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ラグビー日本代表の外国人選手

まず確認しておきたいのが、ラグビー日本代表には日本に帰化している選手も多いです。例えば、フランス大会で4大会連続出場となるリーチマイケル選手は日本に帰化しています。

帰化している以上、日本人であるため、日本代表になっても問題ないでしょう。

ただラグビー日本代表には、帰化している選手だけでなく、それ以外の選手も多くいます

2023年ラグビーW杯日本代表のメンバーも多くの外国人出身者が代表選手となっています。

なぜ他の選手は日本代表に選ばれているのでしょうか。

ラグビーにおける代表ルール

ラグビーにおいては代表に選出される際のルールが他のスポーツとは異なります。

覚えておきたいのがラグビーは、所謂「国籍主義」ではなく、所属する「協会主義」になります。普通のスポーツは国の代表=その国の国籍の選手になります。これが国籍主義です。

一方でラグビーは、それぞれの国にラグビー協会があります。ラグビーの代表はその国の協会代表という考えになります。つまり、ラグビー日本代表は日本協会の代表選手ということです。

そのため、ラグビーでは国籍と代表が一致しない場合があります。もちろん国籍がある国の代表になれるのですが、それ以外に以下の条件を満たせば、国籍とは異なる国でも代表になるチャンスがあります。

その条件が以下の3つになります。

  • 出生地が当該国である
  • 両親および祖父母のうち一人が当該国出身
  • 当該国で5年以上、継続して居住している※1
  • 過去他国で代表になったが、3年以上その国で代表に選ばれていない場合、一度だけ、出生地や両親および祖父母のうち一人が出身の国に代表変更できる※2

※1 2021年以降は居住年数が3年から5年に変更されました
※2 2022年より新たな国籍ルールが追加されています

このどれか一つを満たせば、その国の代表になれるわけです。一番多いのが「当該国で5年以上、継続して移住している」を満たしている場合で、日本にいる外国人選手の場合、5年以上継続して居住しているを満たしている選手が選ばれています。

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過去にはある国で代表になった選手が、別の国の代表になることもありました。例えば、現日本代表ヘッドコーチであるジェイミー・ジョセフ氏はニュージーランド代表として活躍した後、日本代表としても活躍しています。

また、2022年以降、新たにルールが追加されて過去他国で代表になった選手が一度だけ、国を変更して代表選手になることが可能となっています。

いずれにしても、ルールの上では現在の日本代表に外国出身の選手がいくらいても問題ないことになります。

他国の外国人選手の割合はどうなのか?

それでは日本代表以外を見てみましょう。

以下は2011年W杯時の各国の代表のデータになります。各国代表の中に外国出身の選手が何人いたかを表しています。

外国出身選手数
サモア
15人
アメリカ
12人
 イタリア
11人
日本
10人
トンガ
9人
イングランド
8人
オーストラリア
7人
スコットランド
7人

これらを見ると、日本だけが突出して多いわけではありません。外国出身選手が少ないわけではないですが、他国も同じくらいの外国出身選手が含まれています。

ちなみに、ラグビーは協会主義だと先に書きました。例えば、アイルランド代表は国としてのアイルランドと、国としてはイギリス連邦に属する北アイルランドの2つでアイルランド代表となっています。

日本はなぜ外国人出身選手が話題になるのか?

さて、これらをふまえると、日本はルールに則ったうえで、他国もやっているように外国人出身選手を代表に入れているわけです。

それではなぜ日本代表は外国人選手が多いと言われるのでしょうか。

大きく分けると2つの理由があるかと思います。

一つ目は、日本は、いくつか例外があるもののほとんど単一民族から成り立っており、外国人選手を見た目や名前から判別できるからでしょう。日本人から見れば、外国人選手は見た目やカタカナ名から判別できてしまいます。一方で、日本人から見た場合、日本以外の他国に外国人選手がいても、見た目では同じに見えてしまい、海外では日本のように外国人選手がいないように感じてしまうのではないでしょうか。そのため、日本だけ海外出身選手が多く、これでいいのかと感じる人が多いのではないかと思います。

また、もう一つとして、野球からくる発想だとは思いますが、「海外から来る選手=助っ人」という発想があり、スポーツにおいて海外から来る選手は日本人とは別という考えにつながっているのではないでしょうか。

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ラグビーにおける考え方

上記の外国人選手=助っ人という考えは、確かに日本では一般的に広まっている考えですが、必ずしもラグビーに適した考えではありません。

そもそもラグビーにおける代表選出のルールを見ればわかりますが、他国で代表になった選手を日本代表として選出することは諸条件が必要となります。。

現在、LEAGUE ONEや大学ラグビーでは多くの外国出身選手が所属しており、彼らが「助っ人」となっている側面は確かにあります。ただし、他国ですでに代表になっている選手が日本代表になるには出生国か両親および祖父母のうち一人が日本出身である必要があります。なので、一度他国での代表経験がある有名選手は日本代表になることはほぼ不可能です。

現在、日本代表に選出されている外国出身選手を見れば、高校や大学から日本に来ている選手や、無名のまま日本に来た選手が多く、彼らは「助っ人」としてきたというより、日本にチャンスを掴みに来た、あるいはラグビーとともに日本の教育システムで育ってきた選手が多いです。

国籍との葛藤

そして、彼らにも自分の国籍があります。彼らからすれば日本代表になったからには、母国の代表に戻ることは簡単にはできないです。

母国の代表になるか、あるいは日本代表になるか、というのは多くの選手が頭を悩ませる問題です。彼らは、その葛藤の中で日本代表を選んでくれた選手になります。母国の代表をけってまで日本代表を目指してくれたのが今の外国出身選手たちになります。

日本人が他国の代表になることも

また、これまでは今日本代表にいる外国出身選手の話をしましたが、逆のことも可能です。つまり、日本人でありながらも他国の代表として活躍することもできます。

例えば、日本人がNZに5年以上居住していれば、NZ代表であるオールブラックスに選出されることもあるわけです。もちろんその際に、NZ代表として活躍する道もあれば、日本代表を選ぶ道もあります。ラグビーにおいては、国籍、人種、民族の違いというのは関係ないという文化を持っているわけです。

それでも外国出身選手に違和感持つ人は・・・

これまで見てきたように、ラグビーにおいては、国籍主義ではなく、協会主義であり、国籍だけでなく、5年以上居住しているなどの条件を満たせばその国の代表になることができます。

そして、一度その国の代表となってしまうと簡単には国籍変更できません。これらをふまえると、多くの外国人出身選手が日本を選んでくれたことは感謝すべきであり、リスペクトすべき選択になります。

また、そのように外国出身の選手がいる国は日本だけでなく、ラグビーでは他国も含めて当たり前の考え方になっています。

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ただ、それらを踏まえた上でも外国出身選手に違和感を持つ人はいるかと思います。日本的な考え方からすると、それも致し方ないかなという気もします。

ですが、そういう方には是非試合前の国歌斉唱の場面をご覧ください。外国出身選手とはいっても、君が代を歌い、試合に向けて全力を尽くそうとする姿を。

また、彼らがプレーする姿を見てください。それを見れば、外国出身だからとかそういったものを感じなくなると思います。例えば、NZ出身のリーチマイケル選手は高校から日本にやってきてプレーしている選手の一人です。

一度日本代表に選出されれば、日本代表にすべてをささげてくれます。彼らをしっかりと見てくれれば、外国人だから・・・というのは単なる食わず嫌いのようなもので、そういった考えはなくなると信じています。

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