逆襲のサントリー~パナソニックワイルドナイツvsサントリーサンゴリアス

トップリーグ
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パナソニックワイルドナイツと、サントリーサンゴリアス。ここ数年の日本選手権及びトップリーグを見ると、優勝しているのはこの2チームのどちらかという年が続いています。

<トップリーグと日本選手権の優勝チーム>

優勝チーム

※三洋電機は現在のパナソニックワイルドナイツ

 

これを見ると、ここ5年間はこの2チームが日本ラグビー界のトップに君臨していたということがわかります。その2チームの対戦が今年の日本選手権準決勝で対戦となりました。

ここ数年はこの2チームがトップだったと書きましたが、今シーズンに関していえば、両チームの成績は大きく異なったと言えます。

パナソニックワイルドナイツは、今シーズントップリーグ王者となり、2連覇を達成しました。シーズンでは若い選手もうまく使いながら、プレーオフに入ると、主力選手のコンディションを整えて万全の体制と、理解力・コミュニケーション能力の高い選手達が素晴らしいプレーを発揮。決勝ではヤマハ発動機に攻め込まれる時間もあったものの守り切り、そして突き放して見事に優勝を決めました。

対するサントリーは、今年8年連続で進出していたプレーオフに進出することができず、5位でリーグ戦を終了しました。シーズン中から予想以上に接戦となる試合も多く、強さを発揮したというよりはなんとか勝利したという試合も多かった1年となってしまいました。

ただ、その後のワイルドカード争いでは近鉄、リコーと破り、日本選手権出場決定。日本選手権でも1回戦の筑波大を大差で破ると、2回戦の神戸製鋼戦では今シーズン2戦2敗の相手に後半に突き放して22-10で勝利し、この準決勝に挑みます。

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前半

前半はサントリーのキックオフで試合開始です。

試合は序盤からサントリーがボールキープする時間が長くなります。サントリーはSHデュプレア選手中心に展開。シェイプを基本に時に裏へのキックも使いながら相手陣に攻め込みます。

先に得点したのはサントリー。前半11分、相手のアーリータックルを誘い、これを10番ピシ選手が決めて3点を先制。対するパナソニックは、前半15分、相手ボールでのラインアウトから展開してきたところを8番ホラニ選手がタックル。いったん外してすぐに絡んでノットリリースザボールを誘い、ここからショットを選択。ただこのPGは惜しくも外れて得点なりません。

その後はキックが続く時間となります。パナソニックがタッチに出したボールをサントリー、デュプレア選手がクイックスローする形が2回続くという場面もありました。

試合が動いたのは前半20分。相手のハイパントをキャッチしたパナソニックがまず8番ホラニ選手がゲイン。ラックから素早く左に展開し、10→12→7とつないで2対1を作ると、左サイドにいた酒井選手にパス。そのまま左隅を走りきってトライ。ゴールも決まり、7-3と逆転します。

対するサントリーは、28分、自陣から再び相手陣に攻め込み、何度もフェーズを重ね、敵陣22mをこえて、残り10mまで攻め込みます。ここで相手がノットロールアウェイのペナルティを犯すと、ショット選択。これを決めて6-7と1点差とすると、その後も攻め続け、33分にはマイボールラインアウトからモール、展開して攻め込みラック。ここから10番ピシ選手にボールが渡ると、自らステップ刻んで抜け出して中央にトライ!ゴールも決めて13-7と逆転します。

対するパナソニックは、その後相手陣でのラインアウトから北川選手が大きくゲイン。インゴール付近まで到達するも、やや戻されます。が、そこからもボールキープし、相手のオフサイドを誘うと、全体をしっかり見ていた10番バーンズ選手がクイックから右サイドへキックパス。右隅に待っていたユ・ヨンナム選手に渡るとそのままトライ!ゴールはポストに当たって外れて13-12とサントリー1点リードに変わります。

前半はここで終了となります。

後半

後半はパナソニックのキックオフで再開です。

後半に入ると、お互いに相手陣に攻め込むも最後はミスで相手ボールにという時間が続きます。最初にチャンスを作ったのはパナソニック。相手陣でのラインアウトから攻め込み、相手陣10mまでいくも、ターンオーバーされ、自陣に戻され、サントリーボールに。

このサントリーボールのラインアウトからサントリーがフェーズを重ねると、パナソニックがペナルティ。このPGをピシ選手が決めて16-12と点差を広げます。

が、その後すぐ、サントリーがセンターライン付近のボール争奪戦の場面でオーバーザトップ。距離のあるPGでしたが、バーンズ選手がしっかりと決めて16-15と再び1点差とします。

さらに後半17分、サントリー陣でのサントリーボールのスクラムの場面で、パナソニックがスクラムを押し込み、サントリーがコラプシング。このPGをバーンズ選手がしっかりと決めて18-16とパナソニックが逆転します。

これで流れはパナソニックに傾くかと思ったのですが、しばらくは膠着状態が続きます。その後試合が動いたのは後半27分。サントリーが相手ペナルティからショットを選択し、これを決めて19-18と再逆転すると、後半30分にサントリーが自陣でターンオーバーすると、松島選手がゲインし、右サイドでつないでいって大きくゲインします。いったんラックとするとそこからはFWでフェーズ重ね、ゴール中央でラックとすると、18番垣永選手がピックして前進。相手タックラーを引きずりながら中央にトライし、ゴールも成功。これで26-18と8点差までリードを広げます。

さらに後半34分、パナソニックのサポートが遅れたところをターンオーバーし、ボール継続。フェーズを重ね攻め続けると右サイドで23番塚本選手が相手ディフェンスをかわし、独走してトライ!ゴールも決めて31-18とリードを広げます。

サントリーが大きく勝利に近づいたと思いきや、ここからパナソニックが反撃。37分に7番西原選手のゲインからチャンスをつなぐと、キックパスからもなんとかボールをつないでいき、最後はラックから左隅に大きく展開し、途中からWTBに入っていた9番内田選手がトライ!ゴールも決まって31-25と6点差まで追い上げ、逆転のチャンスを残します。

最後、パナソニックがボールキープし、相手陣に攻め込みます。フェーズ重ねて攻め込むも最後は相手タックルの際にノックオン。このボールをサントリーが蹴り出して試合終了となりました。

全体を振り返って

この試合、前半からサントリーがボールキープし攻め込む、パナソニックが守るという場面が多くなりました。ただ、それについては両チームともにある程度予想通りだったと思います。

ラグビーの場合、特にチーム力が拮抗している場合、後半勝負となる試合が多くあります。この試合もまさにそんな試合でした。後半、流れを変えるプレーとしては、一時逆転となるPGにつながったスクラムでのパナソニックのプッシュ、そしてその際のサントリーのコラプシングかと思いました。このタイミングでパナソニックが逆転し、さらに得意のカウンターから突き放すという流れを想像していたのですが、実際はここからサントリーの攻撃の流れを止められなくなったという感じがしました。

疲れからかパナソニックディフェンスが前にプレッシャーをかけることができなくなったのと、攻撃面でもサポートが遅れがちになってターンオーバーを許す場面が増えていったと思います。逆にサントリーは、この時間帯になっても選手の動きが落ちることなく、それに加えて交代選手がさらに勢いをつける試合になったと思います。逆転のトライとなったのは途中出場の垣永選手の前に出る強さが発揮されたトライだったと思います。

本来なら3週連続で試合となるサントリーの方が体力的に厳しいかと思われたのですが、この試合に関しては関係なかったかなと思います。

また、サントリーは年明け以降負けなしとなっていますが、やはりデュプレア選手の復帰が大きいと思います。彼を中心とした攻撃は素早い展開やゆっくりした攻撃、裏へのキックやハイパント、そして自ら切れ込む場面と多彩な選択肢があります。それに加え、ピシ選手が10番に入ることで、相手としてはどちらにもプレッシャーをかける必要が出てくるため、ディフェンス側にはかなり嫌なコンビかと思います。

決勝でもこのコンビがどれだけ活躍するかが大きなポイントになってくるかと思います。今シーズンの悔しさをぶつけて決勝でも是非持ち前の攻撃力を見せつけていってほしいですね。

対するパナソニックは、堀江選手、山田選手、田中選手の3人が不在であったことは影響していたとは思います。彼らがいれば試合の中でもう少し落ち着きをもってゲームを進めることができたのかもしれないです。

ただ、逆に言えば、代表選手が3人抜けてもこれだけの競った試合ができたというのはチーム全体での力が上がってきているとも言えるのではないでしょうか。ここ1年でチームとしてさらに進化した1年だったかと思います。最後は負けてしまいましたが良い1年だったのではないでしょうか。

またこの試合をもって、霜村選手が引退となりました。13番というポジションはどうしても外国人選手が務めることが多い中で、それほど大きくない選手でありながらトップリーグでも外国人選手と対等に戦っていたのが印象に残っています。

今後は桐生第一高校で教師となり、ラグビー部の指導も行うそうです。自らを超えるような素晴らしいプレイヤーを生み出していってくれることを願っています。現役生活、お疲れ様でした。

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