ラグビーを代表する用語の1つがノーサイド(No Side)。ラグビーを知らなくてもノーサイドという言葉を知っている人も多いでしょう。過去にTBSで放映されたドラマ「ノーサイドゲーム」にも使われている言葉です。
一般的にも使われるノーサイドという用語ですが、実は多くの人が知らない事実があります。今回はラグビー用語・ノーサイドについてまとめました。
ノーサイドは現在海外では使われていない
いきなりですが、ラグビーの試合で使われるノーサイドは海外では使われていません。日本だけで使われているラグビー用語になります。
ノーサイドは日本ではラグビーの試合終了時の言葉として使われています。今でもテレビなどで試合終了とは言わず、「ここでノーサイドです」と実況の方が言うことがあります。ただ、この使い方をしているのは日本だけです。通常、海外では試合終了のことをノーサイドではなく「フルタイム(full time)」と呼んでいます。
実際のラグビーNZ代表(All Blacks)の試合終了時のtwitteはこんな感じです。
FT | Time to catch your breath. 100 points in 80 minutes here in Tokyo.#JAPvNZL pic.twitter.com/gJZaX2tKCY
— All Blacks (@AllBlacks) November 3, 2018
日本でも、特に高校ラグビーでは実況の方はノーサイドということが多い傾向があります。ただ、スコア表示などでノーサイドと書かれることはなくなってきたように思います。
こちらは第98回全国高校ラグビー決勝の試合終了時のものです
大阪桐蔭、大接戦を制して悲願の花園初優勝!#高校ラグビー #大阪桐蔭 #桐蔭学園 #桐蔭対決 pic.twitter.com/yK4YTXjzdt
— MBS全国高校ラグビー (@RugbyMBS) January 7, 2019
53秒〜54秒あたりで実況の方が「ノーサイド」という言葉を使っています。
ということで、海外ではノーサイドは利用されていません。また、日本では高校ラグビーではまだまだ利用することが多い言葉だと思います。
松任谷由美「ノーサイド」の影響?
特に高校ラグビーでいまだにノーサイドと実況の方がいうことが多いのは、昔からの名残があるのが大きいかと思います。また、強いて言えば、松任谷由美さんの名曲「ノーサイド」の影響が残っている可能性もあります。
これは実際に1984年1月に行われた第63回全国高校ラグビー大会決勝、天理-大分舞鶴の試合の最後のキックが外れたシーンをモデルに歌われています。1980年代当時はラグビーが人気の高いスポーツであり、中継なども多くありました。その時代に歌われた歌ということもあり、ラグビー=ノーサイドというイメージを持たれた方が多いかと思います。高校ラグビーでノーサイドと実況の方が言うのはその名残があるのかもしれません。
かつては海外でも使われていた!?
ラグビーをよく見る人で、海外のラグビー中心に見ている方の中には、海外ではノーサイドとは言わないのは当たり前だと思っている人も多いです。ところが、日本だけと思われるノーサイドも海外で使われている時代もあったようです。
下記の動画をご覧ください。
こちらは1967年11月4日にイングランドのトゥイッケナムで行われたイングランド代表とニュージーランド代表の試合です。この動画の23:18あたりで試合終了時に実況の方が「No Side」と言っています。少なくともこの時代に、イングランドでは「ノーサイド」という用語が実況の方は使っていたということになります。
ちなみにこの試合はイギリスでは初のカラーによるラグビーのテレビ放送だそうで、その意味でも歴史に残る映像のようです。
かつてイングランドで使われていた?
このノーサイドという言葉が当時のイングランドでは残っていて、なぜ現代には残っていないのか、そして日本では未だに使われているのかは不明です。
なお、こちらも少し前のものですが、2009年1月号のラグビーマガジンに、当時サントリーサンゴリアスに所属していた元オーストラリア代表のジョージ・グレーガン選手のインタビューが載っています。
ここでのインタビューでジョージ・グレーガン選手は「ノーサイドという言葉は聞いたことがない」とインタビュー内で答えています。
真相は不明な部分が多いですが、何れにしても1960年代ごろにイングランドでは「ノーサイド(No Side)」は使われていたが、その後は使われなくなったと見るのが一般的のようです。その言葉がなぜか日本ではまだ残っているというのは不思議なことですね。
ノーサイドに追加された意味
このノーサイドという言葉、元々はラグビーの試合終了を指す言葉ですが、それ以上に「ノーサイドの精神」という形で利用されることも多いです。ノーサイドの笛がなると敵・味方の区別なく、お互いに健闘をたたえるというものです。
ラグビーでは試合終了後、お互いに握手して健闘を讃えることが通常であり、この「ノーサイドの精神」は日本だけでなく、世界のラグビー界で見られるものになります。ただ、先ほど書いたように世界的にはノーサイドという言葉が知られているわけではないので、お互いの検討をたたえ合うのは、ラグビーの根本にあるものだと認識されているのでしょう
日本では、この「ノーサイドの精神」という言葉は、ラグビー界だけでなく、対立していた両者が和解する際に使われることがあります。特に政治家などが利用することが多いように思います。
ノーサイドが日本でここまで広まっている背景には、単なる試合終了の意味を超えて、一般的に使われる言葉として「ノーサイドの精神」として広まったのが大きいでしょう。
敵・味方に分かれるのは日本だけ??
さて、この「ノーサイドの精神」、試合終了後に敵・味方区別なく健闘を讃えると日本では考えられています。ただ、世界のラグビーをみると、この説明も必ずしも正しいわけではありません。もちろん、選手たちは試合中には敵・味方に分かれますが、観客席をみると、お互いのチームのファンが隣同士に座って、試合を見るのは当たり前の光景です。
一方で、日本では、LEAGUE ONEや大学、高校などチームのファンが両サイドに別れて見るというのが一般的になっています。試合によっては、チーム応援はこちらのサイドでと書いていることも多いです。これらはトラブルを避けるためになされていることもあるかと思いますが、世界のラグビーからすると一般的ではありません。
日本では試合終了後に「ノーサイド」とされますが、世界的には試合前、試合中、試合後も含めてサイドは作らないのがラグビーです。そう考えると、ラグビーの「ノーサイド」は日本独自で作られてきたラグビー文化だと言えそうです。
W杯日本大会では常に「No Side」で
このように日本独自で利用されてきた「ノーサイド」ですが、敵・味方のサイドを作ることをしないという大原則は、とても良いものです。ラグビーW杯日本大会でその面白さを理解してくれた人も多いでしょう。
これからも日本でラグビーの試合があります。またW杯フランス大会もまもなく開幕します。
日本でゲームを行う際には多くの外国人観光客の方が日本に訪れることがあリマス。試合終了後だけわかりあうのでなく、試合前、試合中も含めてサイドを作ることなくもてなす。これからも、ぜひそういうシーンを増やしていきたいですね。
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