ヤマハ発動機ジュビロ優勝に見るラグビー強化方法

コラム
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2015年2月28日(土)、14,627人が集まった秩父宮で開催されたラグビー日本選手権決勝は、ヤマハ発動機がサントリーを破り、初優勝を飾りました。

ヤマハ発動機ジュビロは一時強化縮小に伴い、入れ替え戦も経験したチーム。そこから清宮監督がチームを指揮し、今年で4年目。今シーズンはトップリーグでトップ4入りを果たすと、プレーオフ決勝に進出。惜しくもプレーオフ決勝は敗れ、準優勝に終わるも躍進を印象付けたシーズンになりました。

この日本選手権決勝ではサントリーとの対戦。前半からヤマハが優位に試合を進めます。まずは前半7分、FWでディフェンスを集めてマレサウがカットインしてトライを奪い、7点を先制。その後、互いにPGを決めて10-3とすると、前半26分にはスクラムから左に展開し、11番中園選手がトライを決めて15-3とリードをします。

後半に入ると、五郎丸選手がシンビンで一時的退場になり、守りの時間が長くなるものの、しっかり守り切って後半は15-3のまま見事勝利となりました。

準決勝の試合もそうですが、この試合も際立ったのはディフェンスでした。日本選手権2試合で相手をノートライに抑えて、我慢したシーンが多くありました。この試合でも際立ったのはリロードの意識。しっかりと立ってプレーする選手が多く、そのためゲインされるシーンが少ない、またゲインされてもその後再びディフェンスラインを構築するのが早く、大きなピンチが少なかったかと思います。

また、自陣での反則も少なく、相手に得点チャンスを与えなかったのも大きかったと思います。また前半2回、後半1回あったチョークタックルからのモールアンプレアブルなど狙ったプレーが随所に決まり、終始自分たちのペースで試合を進めることができたのも大きかったと思います。

いずれにしてもヤマハ発動機ジュビロの選手、関係者、ファンの皆さん、おめでとうございます。

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ヤマハと見るフィジカル強化の重要性

さて、ヤマハ発動機ジュビロですが、4年前には入れ替え戦にも出場したチーム。強化縮小に伴い、日本人のプロ契約選手はいなくなり、大きく戦力ダウンした中で清宮監督が就任し、チームの再強化へと進みだします。

その中でまず最初に取り組んだのがフィジカルの強化に務めます。レスリング練習や筋力upなどフィジカル面での強化から入りながら、フランスにスクラムを組むためだけに練習に行くなどスクラム・ラインアウト・モールの強化も進め、徐々に力をつけていきます。

清宮監督が就任した2011/12シーズンは8位、翌年が6位、昨年は5位。徐々にトップ4に近づいて今年の日本選手権優勝につながっていきます。

これらの順位につながったのもフィジカルの強化がスタートとなっています。ラグビーがコンタクトスポーツである以上、まずフィジカルの強化から進めるというのは重要なポイントかと思います。まずは強いFWを作って、安定したゲーム作りの根幹を作ることから始まったわけです。

ヤマハはこのフィジカルを4年間しっかりと強化し続けたことで日本一までたどり着きました。当たり前ですが、これは日々のトレーニングの中で身につくものです。こういった日々の積み重ねによって今回の日本一にたどり着いたのだと思います。

同じようなチームとして、大学では帝京大学が挙げられます。今年で大学選手権6連覇、さらには日本選手権でNECを破り、トップリーグチームの撃破を果たした帝京大学ですが、その強化も、まずはフィジカルの強いFWを作ることから始まっています。帝京大学が大学日本一になった際には、ボールが展開しない、つまらないラグビーという批判もありました。が、まずはフィジカル強化から始め、そこからバックス展開でも強みを見せるチームに変化していったわけです。

今回のヤマハの日本一を見ると、どことなく帝京大学が連覇を重ねていく姿と似ているような気がしています。

セットプレーの安定とコーチの存在

また、ヤマハが強くなっていった姿は日本代表が強くなっていく姿と重なる部分もあります。日本代表では、ここ数年、スクラム・ラインアウトの安定を求め、大きく強化していきました。その結果、世界では押まけることが多かったスクラムは、逆に日本の大きな武器になってきています。(もちろん、これと並行してフィジカルの強化というのも進めています。)

このセットプレーの安定はヤマハにも同じことが言えるかと思います。シーズンを通してスクラムの強さというのはヤマハの武器になっていたように思います。決勝でも相手を押し込んでペナルティを奪う場面が何度もありました。ヤマハにとって大きな武器となっていたことが試合を有利に進めることができた要因のように思います。(やや話がずれますが、チョークタックルによるモールアンプレアブルを狙うのもスクラムになれば勝てるという気持ちがあってできるプレーなのかと思います。)

この強いスクラムを支えたのは長谷川慎コーチの存在が大きかったと思います。3度の飯よりスクラムが好きと言われているコーチの元でトップリーグでの1,2を争う強さとなりました。日本代表でいえば、スクラムコーチはダルマゾコーチです。エディージョーンズHCに言わせれば、"クレイジー"とも評されるコーチですが(笑)、いずれにしても、強化を進める上で優秀なコーチの存在は不可欠であると思います。

またヤマハは決して選手層が厚いチームではないですが、ほとんどの試合でスタメンが固定され、全試合出場の選手も多くいます。これは選手の強さもそうですが、コンディショニングコーチなど周囲のスタッフの人の支えなども大きいと思います。

いわゆるS&C(ストレングス&コンディショニング)トレーニングであったり、ケアの部分は現代ラグビーでは欠かせない要素になっていますが、ヤマハはその部分でも進んでいたのではないかと思います。

そしてこれらは日本代表や前述した帝京大学でももちろん重要視されており、強化に当たっては必須の部分かと思います。

日本代表とヤマハと帝京大~強化の方向性

とまぁ見てきましたが、どことなくヤマハが強くなっていった過程や強化方法を見ていくと、近年その実力をあげている日本代表や帝京大学と重なる部分があるのではないかと思っています。

フィジカルの強さ・セットプレーの安定・専門コーチの存在・S&Cの強化・専門スタッフの支えetc

もちろんその先の試合における戦略であったり、戦術面では違ったものがあるかと思いますが、強化の進んだチームを見ると、その進め方は似ているように感じます。名将と呼ばれる監督は1人で全てをやるわけではなく、専門コーチやスタッフを含めて名将になっていっているような気がします。そしてただ、任せるのではなく、コーチ・スタッフと共に方向性がしっかり定まっているように思います。

また、代表にしても、ヤマハにしても帝京大にしても、1~2年ですぐに結果が出るものでもなく、やはり継続して結果を出したという点も似ています。

ラグビーシーズンは今日の試合で今シーズンはメインのゲームは終了となります。来年以降、今年の反省を元に各チームがまた新しいシーズンが始まります。今年うまくいかなかったチームも1年では結果が出なかったチームもあったかと思います。各チームには是非長期的な方向性で強化を進めていただければと思います。

 

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