ラグビーW杯は次回日本で開催されます。これまでラグビーW杯が開催されたのはすべてティア1と呼ばれるラグビー強国でした。これに対して2019年に開催される第9回ラグビーW杯は初めてティア1の国以外で開催されます。もちろんアジアでの開催も今回が初めてとなります。ラグビー界にとっては新しい歴史を作る大会となります。
そんなラグビーW杯日本大会ですが、すでに各地で準備が始まっています。会場も決まり、W杯出場国のキャンプ地誘致も進んできました。そんなラグビーW杯ですが、良いことばかりではなく、まだまだ課題も多いです。
その中の1つがスタジアム問題です。今回はそんなラグビーW杯とそれに付随すスタジアム問題を考えてみたいと思います。
ラグビーW杯に利用するスタジアムと期間は?
ラグビーW杯を開催するスタジアムはすでに12の会場と決まっています。
札幌市 | 札幌ドーム |
岩手県・釜石市 | 釜石鵜住居復興スタジアム |
埼玉県・熊谷市 | 熊谷ラグビー場 |
東京都 | 東京スタジアム |
神奈川県・横浜市 | 横浜国際総合競技場 |
静岡県 | 小笠山総合運動公園エコパスタジアム |
愛知県・豊田市 | 豊田スタジアム |
大阪府・東大阪市 | 花園ラグビー場 |
神戸市 | 御崎公園球技場 |
福岡市 | 東平尾公園博多の森球技場 |
熊本県・熊本市 | 熊本県民総合運動公園陸上競技場 |
大分県 | 大分スポーツ公園総合競技場 |
※ラグビーW杯では命名権を利用した名称は使えないので上記表記としています。
ラグビーW杯の開催期間は、2019年9月20日から2019年11月2日までとなっています。9月20日に東京スタジアムにて開幕戦を行い、そこからリーグ戦を各地で行います。また、リーグ戦が終われば決勝トーナメントが始まり、11月2日に決勝戦を横浜国際総合陸上競技場で行う流れになっています。
ラグビーの場合、走るだけでなく、体をぶつけあうスポーツなので疲労を回復するのに時間がかかります。そのため、試合間隔が長くなり、必然的にW杯の開催期間も長くなるのが特徴です。オリンピックが2週間ほどで終わり、サッカーW杯も1か月ほどで終わるのに対し、ラグビーW杯は2か月弱と長期間にわたって開催されます。
ラグビーW杯開催期間中、スタジアムはどうなる?
では、ラグビーW杯開催期間中のスタジアムはどうなるのでしょうか。上記12会場のうち、ラグビー専用で利用する会場は、新しく作られる釜石鵜住居復興スタジアムと、ラグビー場である熊谷ラグビー場、花園ラグビー場の3会場くらいです。逆にいえば、その他の会場は他のスポーツでも利用される会場であり、開催期間中も他のスポーツは開催されます。
札幌ドームはプロ野球・北海道日本ハムファイターズの本拠地ですし、それ以外のスタジアムもJリーグチームの本拠地であったり、本拠地の1つとして利用されるスタジアムです。もちろん他の陸上競技を行うこともあるかと思います。
ラグビーW杯で1会場で行う試合はおそらく3~5試合くらいになるかと思います。試合の日だけであればそこまで影響はないですが、もちろん試合前の準備もありますし、何よりラグビーは芝が荒れやすいスポーツなので、サッカーをやるには芝の回復期間も必要になってくるでしょう。
そのため、他スポーツからすると、ラグビーW杯期間中に本拠地を利用できないという問題が生じます。もちろん、代替地があればそちらを使うということもあるかと思いますが、適切な代替地がない場合には、W杯と併用していく必要も出てくるかと思います。
ラグビーW杯中、スタジアム問題が生じそうな会場は?
さて、では上記会場の中で、特にスタジアムに関する問題が生じそうなのはどの会場でしょうか?
まず出てくるのが札幌ドームです。ここは、ラグビーW杯の会場ですが、同時にプロ野球・北海道日本ハムファイターズの本拠地であり、しかもJリーグではコンサドーレ札幌も本拠地の1つとしています。W杯開催時期は、プロ野球も終盤戦でクライマックスシリーズや日本シリーズなども開催される可能性があります。また、Jリーグも終盤になり、こちらも利用頻度が増えてくるでしょう。また、札幌という立地を考えると、ドームではない競技場での試合は寒さもあってやりたくない時期です。それを考えると、札幌ドームをどう使い分けるかという問題が生じるでしょう。
参考:日本ハム 19年シーズン終盤札幌D使えない?ラグビーW杯余波
また、もっと根が深そうなのが、東京スタジアム(味の素スタジアム)です。味の素スタジアムはW杯の開幕戦が決まっています。また、ラグビーW杯では試合ごとに収容人数がスタジアムが決められています。味の素スタジアムは収容人数が多く、準々決勝以降も利用されやすいスタジアムでしょう。となると、予選プール戦の数試合だけではなく、決勝トーナメントでも利用される可能性が高いです。その場合、味の素スタジアムを本拠地とするFC東京と東京ヴェルディが約2か月も味の素スタジアムが利用できない可能性が出てきます。
参考:【F東京】味スタが2か月使えない…19年ラグビーW杯期間中、代替競技場探し難航中
東京のスタジアム問題と秩父宮のサッカーへの貸し出し
実は東京都には大規模なスタジアムはそれほど多くありません。国立競技場があった時は、国立競技場が一番大きなスタジアムでしたが、それがなくなった今、味の素スタジアムが収容人数が多いですが、それ以外は中規模レベルになります。
トップリーグの開催地を見ても、東京で開催される会場は、秩父宮ラグビー場・味の素スタジアム・町田市立野津田公園陸上競技場・駒沢陸上競技場の4つだけです。しかも駒沢と町田はJ1規格を満たしていないようで、サッカーJ1では試合できない状況です。また、これらは陸上競技場であるため、臨場感が減ってしまうスタジアムです。
もちろんこれ以外にもスタジアムはありますが、どうしても収容人数が少ないものになります。
秩父宮をサッカーに貸し出せないか?
と、ここで考えられるのが秩父宮ラグビー場のサッカーへの貸し出しです。秩父宮ラグビー場は今でこそラグビー専用ではありますが、歴史的にはサッカーの試合を行ったこともあるようです。
参考:秩父宮ラグビー場
また、秩父宮ラグビー場の建て替えの問題もありますが、少なくとも19年11月のラグビーW杯までは利用できるとのことです。そのため、ラグビーW杯期間の代替地としてサッカーでの利用も可能なのではないでしょうか。
何より、秩父宮は専用スタジアムでトラックのないスタジアムです。また、アクセスも抜群なので、これほど利用しやすい、観客からもうれしいスタジアムは東京都心にはないでしょう。
ラグビーの聖地を貸し出すことへの異論
この話をするとラグビー界からはラグビーの聖地である秩父宮を、W杯期間中にJリーグのチームに貸し出すなんて、と反発する方もいるかとは思います。
そもそもの経緯からすると、ラグビーW杯は国立競技場で行う予定で、それがラグビーW杯までに間に合わなくなってしまったので、代替地として味の素スタジアムでの開催となりました。ラグビー界とすれば、別に悪くないのに、と思うこともあるでしょう。
「別にラグビーに原因があるわけでもないのに代替地が味の素スタジアムになったのだ、それなのにラグビー界がわざわざ聖地を貸し出す必要もない。W杯期間には大学ラグビーなどもあるので、それを割いてまでサッカーに貸し出すこともないし、代替地はサッカー界で何とか探してくれ」という意見も出てくるでしょう。
ただ、じゃあラグビーが何もしなくてもいいのか、と言われるとそれは違うかと思います。特にラグビー界はどことなく、ラグビー至上主義の人が多く、他のスポーツと連携してよくしていこうという考え方が薄い気がします。むしろ、特にサッカーに対しては、なぜかライバル意識があるのか、敵意むき出しにする場面も見てきました。
でも本来はスタジアムに関しては手を取り合っていくべき関係のはずです。陸上競技場が多い日本のスタジアム事情を考えると、むしろサッカーとラグビーが協力して専用スタジアムを増やしていくよう努めていく必要があります。
それを考えると、ラグビーW杯期間中にはサッカー界に秩父宮ラグビー場を貸し出し、お互いに問題がある際には助け合っていく必要があるのではないでしょうか。
最後に
ちなみに、今年のサンウルブズの開幕戦は昨年と同じく、トップリーグ選抜とのチャリティーマッチとなることが決まっています。
参考:東日本大震災、熊本地震復興支援チャリティーマッチ開催のお知らせ
この試合は北九州スタジアムのこけら落としの試合となっています。これはギラヴァンツ北九州の本拠地となることになっていますが、そのこけら落としとなる試合をラグビーが利用できるわけです。
このスタジアム自体は北九州市が計画して建設しているものですが、もちろん根底にはギラヴァンツ北九州の本拠地として建設されているわけですし、チームとしても建設に向けて働きかけや度重なる協議もしてきたでしょう。
そうやってできたスタジアムの最初の試合をラグビーに貸し出してもらえるわけです。もしラグビーとサッカーの立場が逆だったらこけら落としのゲームを貸し出したでしょうか。
ラグビーW杯は世界的なスポーツの大会であり、それに向けて多くの関係者の協力が必要です。それに対して、他の関係者の協力を得るために、ラグビー界としても他スポーツへも何かしてあげる必要があるでしょう。
「ラグビーW杯は世界的な大会だ!だから他のスポーツは協力するべきだ!」だけでは何も協力関係は生まれません。秩父宮はラグビーの聖地ですが、困ったときにサッカー利用もしてもらえばいいのではないでしょうか。
"ONE FOR ALL,ALL FOR ONE"はラグビーの大事な考え方です。それならば他スポーツにもその考え方を適用していくラグビー界でありたいと思います。
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