W杯でのラグビー日本代表の歴史的勝利となった南アフリカ戦ですが、この試合で初めてラグビーを見たという方も多いと思います。また、ラグビーはちらっと見たことはあっても真剣に見たことはないし、よくルールはわからないという方も多いと思います。
そこで今回は南アフリカ戦の映像を見ながら、ラグビーのルールを見ていこうと思います。今回は第2弾。前半途中からいくつかの場面を見ながら解説していきたいと思います。
ラグビーのルールを知るその前に・・・
さてラグビーのルールを知るその前にですが、よくラグビーのルールがわかりにくいという方がいらっしゃいます。また、観戦に行きたいとかテレビで見たいという場合、もちろんラグビーのルールを知ってからいけばより良いとは思います。ただ、初めて見る際には特にルールは知らなくても問題ありません。
日本代表vs南アフリカ代表の試合を見た方はわかるかと思いますが、ルールを知らなくても「すげぇー!」とか「いけぇー!」とか「押せぇー!」とかそんな感じで盛り上がれば大丈夫です。
実はそこまでルールを知らなくても楽しめるのがラグビーです。ラグビーを観戦し始めた人の多くがはじめはルールをよく知らなかったけど、選手同士のぶつかり合いだとか、ラインアウトの高さだとか、キックだとか、ランの速さとかルールとは関係ないところから入っています。
とりあえずそこまでルールにこだわらず、素人でもにわかでも大丈夫ですので、自然に楽しんでもらえばいいかと思います。
最低限覚えておきたいルールはこちら
反則名についてはこちら
その1はこちら
それでももっと知りたい、とか、あれが何が起こったのかわからないという方もいると思うのでそういう方は以下読み進めてもらえばと思います。
南アフリカ戦のルール解説
というわけで、もっとラグビーのことをよく知りたいという方はここから南アフリカ戦を元にルールを確認していこうと思います。
というわけでこちらの動画を参考に見ていきます。
今回はまず前半の40分の途中から見ていきます。場面ごとに説明していきますので上の動画を見ながらご覧ください。
※ここから先は時間については左上の時間で確認していください。ただし、「動画(上)の○○:○○」と記載しているところについてはyoutube上の時間を指しています。
24:19〜 スローフォワード〜オーバーザトップ〜トライ
では今回はまず、相手ボールのラインアウトから始まり、日本がトライを奪うシーンまでを見ていきたいと思います。
ラインアウト〜南アフリカ選手のスローフォワード
まずは相手南アフリカのラインアウトになります。ラインアウトはしっかりとマイボールキープできるかどうか、しかもクリーンにキープできるほど良いです。今回のラインアウトを見ると、24:21あたりで南アフリカの選手と日本の選手が競り合い、なんとか南アフリカの選手が自陣へボールを落としています。
が、このボールをノーバンではなく、ワンバウンドしてから南アフリカのSH(スクラムハーフ)の選手がキャッチ。ワンバウンドしたことで、日本代表リーチ選手のプレッシャーを受けながらのパスになっています。その結果、中央へとまわしたパスがスローフォワードとなります。(24:24あたり)
スローフォワードとはボールを前に投げてはいけないという反則です。見てもらえば分かるように、実際には前に投げる人はほとんどおらず、横の選手にパスしようとしたのがやや前に投げてしまったケースがほとんどです。
今回もリーチ選手のプレッシャーを受け、体勢悪いところから横の選手にパスを出そうとして、スローフォワードになってしまいます。横なのか、前なのかは判断が難しいところがあり、レフリーの判断次第の部分も大きいですが、今回のは誰が見てもスローフォワードと見ていいかと思います。ちなみにレフリーは24:29あたりで「前に投げたよね?」という感じのジェスチャーをしてるのが分かるかと思います。
スローフォワードがあった場合、スクラムでの再開となります。同じようにノックオンも相手ボールスクラムからの再開となります。これらの反則はペナルティとは呼ばず、不可抗力で起こってしまう軽い反則だと思ってください。逆にペナルティは規律が守れずに起こってしまうものだったり、故意の反則になります。
スクラムから相手のオーバーザトップ
続いてはスクラムからの場面を見ましょう。25:07あたりからスクラムが始まっています。スクラムは、レフリーの「クラウチ・バインド・セット」の声で始まります。クラウチは「構えてね」、バインドは「相手と腕組み合ってね」、セットは「ぶつかってね」という感じです。この合図で相手と組み合いますが、その後、SHからボールが投げ入れられます。後は押し合いです。基本的にはボールを投げ入れるチームの方が、一番後ろの選手(NO.8)まで足でボールを後ろに下げて、そこからボールを出す、というのが一般的です。逆に敵チームはそうさせないように相手を押し込んで、マイボールにするという感じです。
今回の場合、25:18あたりでSH田中選手からボールが投げ入れられ、押し合いが始まりますが、南アフリカの選手がぐっと押してきたので、25:21あたりでボールがこぼれてしまっています。日本としては苦しいスクラムでしたが、なんとかボールキープし、攻撃を続けます。
ちなみにスクラムは非常に奥が深く、これだけで別のスポーツと言ってもいいほどのものです。そして初めて見た人にとってはどちらの反則なのかよくわからないものです。というより、長く見ていてもよくわからないですし、選手ですら、スクラムに加わらないバックスの選手はスクラムのことはよく分からない選手も多いです。なのでよく分からない人はとりあえず、これでボールがどちらになるか決まるんだな、くらいの認識でいいかと思います。
さて、なんとかボールキープした日本代表ですが、その後はまずはゆっくりとFWでフェーズを重ねて攻撃態勢を整えます。そして、25:50あたりから左のバックス陣に展開。いったんラックとなってさらに左へと展開し、左サイドでラックができます。その後は田中選手が戻ってきて内側にパス。26:06あたりで接点が出来ます。すると相手南アフリカの選手が絡んでくるところで、26:08あたりでレフリーがさっと左手をあげて、南アフリカが反則をして日本にアドバンテージがあることを宣告します。アドバンテージを貰った日本は右サイド側に展開。26:26には日本が前方にキック。このキックは相手に渡って、その後相手がノックオンした感じにもなりましたが、26:32あたりでレフリーが笛を吹いて、アドバンテージを適用したことになります。
前回のその1でも少し書きましたが、ラグビーはアドバンテージを多用するスポーツで、今回も実際の反則からしばらくは日本がボールキープできていたので、プレーを継続していました。アドバンテージはどこで消滅するか、ですが、これはレフリーの判断になります。一定の距離をゲインしたり、ボールを継続し続けたりするとアドバンテージ解消と判断されます。陣地や試合の流れによっても異なりますし、レフリーによっては解消まで長く時間を取る人もいれば、短めの人もいるので、この辺りもレフリーにあわせる必要があります。また、一般的にはペナルティの後のアドバンテージは比較的長めにとって、ノックオンやスローフォワードなどの軽い反則のアドバンテージは早めに解消されることがあります。
今回はペナルティがあった後日本代表がキックしたものの日本のボール継続ができなかったので、アドバンテージを適用し、ペナルティを宣告しています。
さて、元に戻して、今回のペナルティですが、「オフザフィート」、日本では「オーバーザトップ」というペナルティになります。これは相手側に倒れ込んで、ボール争奪を妨害したという反則です。日本では「倒れ込み」とも言いますね。ラグビーでは「ラック」内では立った状態で相手と押し合い、地面にあるボールを乗り越えてマイボールにする必要があります。その際に、相手側に頭を下げて倒れ込んでしまうと、争奪戦に参加できなくなります。動画上の33:08あたりからのスローVTRが分かりやすいと思いますが、南アフリカの2番の選手が頭を下げてボールにいって、覆い被さるようにしてしまったため、日本の選手はボール争奪戦に参加できません。よって「オーバーザトップ」というペナルティとなりました。
タッチ蹴りだし、モール〜コラプシング〜TMO~再びモールでトライ
さて、それではいよいよ最後のトライシーンまで見ていくことにしましょう。
まずはタッチに蹴りだすシーンから。27:10あたりの場面、五郎丸選手がタッチに蹴りだしています。ペナルティから再開するときは、PGを狙う、タップキックしてすぐにゲームを再開する、スクラムを選択する、タッチに蹴りだしマイボールラインアウトなど色々な選択が可能です。今回はほぼハーフウェーラインでのペナルティだったので、陣地を進めつつ、マイボールで再開できる、マイボールラインアウトを選択しました。
そしてこのキックが大きく伸びて敵陣深くで日本がマイボールラインアウトのチャンスを得ます。五郎丸選手はゴールを狙うプレースキックもそうですが、このようなタッチに蹴りだすキックも距離が出るので、大きな武器になっていますね。
で早速27:38あたりからラインアウトが始まります。ボールを空中に持ったまま、両チームが組み合って押し合いをしています。モールでは横から人が入るとオフサイドになるため、日本代表はボールを後ろに渡して、簡単に相手がボールに絡めないようにしています。また、通常モールはFWだけで押し合うことが多いですが、このモールはバックスの選手も入って押し込んでいます。
その中で、27:55くらいにレフリーが左手を日本側にあげてペナルティがあったことを示し、アドバンテージをとります。その後も日本は押し続け、27:59にレフリーが笛を吹きます。この笛は、レフリーがアドバンテージを適用し、南アフリカの(モール)コラプシングを取った示していますが、その後ちょっとしたいざこざがあり(笑)、レフリーが28:23あたりに両手で四角くジェスチャーをしています。
このジェスチャーはTMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)のことで、テレビを使ってトライや反則の場面を確認します。今回はトライかどうかを確認しています。動画の35:46あたりや36:11を見ると、ボールは地面にはついているように見えますが、ラインの上であるかは確認できません。ラグビーではライン上でボールを地面につけてもトライなので、少しでもラインにかかっていればOKです。
ただ、結局確認できなかったということで、先ほどの南アフリカの(モール)コラプシングをとって、日本ボールで再開となりました。そこで日本は再度ラインアウトを選択するため、動画上の37:39あたりで五郎丸選手がタッチへ蹴り出します。再度のラインアウトとなった28:39あたりでボールを投げ入れると、再びバックスも参加してモールを押し込んで、最後はリーチ選手のトライ。全員の力でもぎ取ったトライとなりましたね。その後30:15あたりからのコンバージョンも成功し、10-7とリードしました。
31:05~ノックオンオフサイド~ラインアウト~南アのトライ
さて第二回の最後は相手のキックから日本がペナルティを犯し、南アフリカがトライを奪うシーンを見ていきましょう。
ノックオンオフサイド
まず31:05くらいから見てもらいたいと思います。日本が相手陣に蹴ったボールを南アフリカがキャッチし、自陣から高くキックを上げています。この高く上げるキックを「ハイパント」と呼びます。高く上げることで相手がキャッチしにくくなると同時に、自陣にいた選手も前に走ることができ、ボールが落ちてくるところを競り合うこともできます。
なおラグビーではキックした時点で蹴った位置より前にいる選手はすべてオフサイドポジションにいることになります。なので、そのままボールを競りにいくことはできません。ただし、キックした人より後ろにいた人はオフサイドポジションではないので、競りに行くことができます。このシーンでいえば、31:10あたりで南アフリカの15番の選手が日本の選手がキャッチする目前まで迫っています。また、それまでオフサイドポジションにいた南アフリカの選手も15番の選手に抜かれることでオフサイドの位置ではなくなります。15番の選手が奪取することでオフサイドラインがどんどん前になる、とイメージするといいかもしれません。南アフリカの選手はそれまで止まっていたのに、15番の選手に抜かれてから前進しているのが見て取れるかと思います。オフサイドにいるときはプレーに関与せず、オフサイドでなくなってから前進しているわけですね。
さて、南アフリカの選手はこのあたりにしておいて、この31:10で日本のNO.8ツイ選手がキャッチしようと思ってもキャッチできず、やや横側前方にボールが飛んでノックオンとなってしまいます。そしてこのときに前方から戻ってきたリーチ選手がボールに触って後ろにボールをはたいています。
後ろにボールをはたくのは問題ないですが、問題となるのはリーチ選手の位置ですリーチ選手はノックオンしたツイ選手より前方にいました。ツイ選手がボールに触れたときに、リーチ選手はオフサイドポジションにいたわけです。そして、そのままボールに触れてしまったのでオフサイドとなります。このノックオンしたボールにオフサイドの位置の選手が触ってオフサイドになることを、「ノックオンオフサイド」と言って、ペナルティになります。ノックオンした際にしばしば起こるペナルティの1つです。
ラインアウト~トライ
さて、このノックオンオフサイドの結果、南アフリカはタッチに蹴り出し、ラインアウトを選択。ここはキックも狙えるような位置ですが、南アフリカとしてはトライ狙いにいったわけです。なお、競った試合やゲーム序盤は特にPGで3点を狙いに行く試合が多くなります。ここでトライ狙いということはまだ日本を恐れていない、とも言えるかもしれません。これが後半にはPG狙いに変わっていくのも面白いところです。
そして、32:00あたりからラインアウトとなり、そのままモールを形成、徐々に動き出すと、最後は一気に前進し、トライを奪います。この試合全般に言えることですが、日本は得点を取った後にすぐに得点を取られるケースが目立ちました。本来ならあまり良い展開とは言えないのですが、その後しっかりと得点を重ねてくらいついていった結果、最後の逆転につながったかと思います。
また、この南アフリカのトライ後のゴールは外れています。トライ後のゴールを狙う位置は、トライをした地点からサイドラインに平行に伸ばした直線上から蹴ることになります。よく、走ってトライするシーンで、相手を抜き去った後に真ん中に持っていく選手がいますが、真ん中に行く理由はこのトライ後のコンバージョンを決めやすくするためです。余裕がある場合はできるだけ真ん中でトライし、その後のゴールを簡単な角度から蹴るようにしているわけですね。
2回目まとめ
というわけで2回目は前半のトライシーン前後を見てみました。ご覧いただいたように、ラグビーは流れの中でペナルティが発生し、それをアドバンテージで流しながら、うまくせえられなかったら、アドバンテージを適用する場面が多々あります。なので、アドバンテージを理解するとより面白くなるかと思います。それともう一つ色々なペナルティがあってその多くが密集で起こりますが、オフサイドはそれ以外の場面でも起こります。
ペナルティを理解するようになるのもラグビーが面白くなるポイントかと思います。ただし、密集でのペナルティはやはり一目見ただけではわかりませんし、玄人の方でもテレビでリプレイを見てやっとわかるという場面も多いです。なので、あまり細かく見ていくよりも、レフリーが笛を吹く、あるいはアドバンテージの腕を上げるのを見て、とりあえず今ペナルティがあったんだと思っておけばいいかと思います。
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