ラグビー日本代表が起こした地殻変動(2)〜痛恨ミスから改善のトップリーグ〜

ラグビーW杯からその後の日本ラグビー界の変遷について。今回は第2回ということで、W杯後のトップリーグについてです。

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W杯後のメディアでのラグビー露出

W杯が終わると、しばらくはW杯出場メンバーがテレビ出演するのをよく見ていた。これまでラグビーをテレビで見かけることは多くなかった。「今日はラグビー日本代表の特集があるぞ!」なんて日には、ラグビーファンみんなが「これは見ておかないと!」と思っていた。それだけラグビーが特集されることが少なかったからである。

ところが、ラグビーを特集する番組があまりに増えてきて、全部を見るということはほぼなくなった。W杯後にラグビーを扱う番組が増えてしまい、いちいち追いかけていくのができなくなってしまったからである。

よく考えれば、野球やサッカーであれば、今日は「野球の特集がされるから見なきゃ!」というような環境ではない。当たり前のようにメディアで特集されるからだ。ラグビーもW杯後はまさにそんな感じであった。

ラグビー界のスターから国民的スターへ

W杯以降でいえば、なんといっても五郎丸選手が一気に国民的スターとなったことも忘れられない。テレビを見ると五郎丸という名前を聞かない日はなくなった。気付けば各種イベントに呼ばれ、CMも見るようになった。元々ラグビー界で知らない人はいないという選手ではあったが、今では日本国内で知らない人はいない選手に変貌を遂げた。

この時期驚いたことと言えば、トップリーグの練習試合にも変化があった。トップリーグの練習試合は、公式戦と異なり、各チームのクラブグラウンドで行われるものだ。練習試合は無料で行われるのがほとんどだが、それでも満員になることはほとんどない。選手の家族、関係者、そして一部のファンが集い、試合を見る。牧歌的な雰囲気の中、行われるものだった。

ところが、五郎丸フィーバーはそれを変えてしまった。場所が通常のヤマハ大久保グラウンドではなく、遠州灘海浜公園球技場という外部施設に変更。平日昼間の試合にも関わらず、3,000人もの観客が訪れた。この試合もテレビ中継されており、当然の如く、プレースキック時の五郎丸ポーズに注目が集まった。

平日昼間の練習試合なので、これまでなら50人程度いれば、という試合だったと思う。それまでのラグビーファンはこの1年で多くの驚きや変化を目にしてきたが、五郎丸選手関連のものは、想像以上だったと思う。

トップリーグ開幕戦・まさかの大ミス

時は経ち、2016年11月13日(金)、今年のトップリーグの開幕を迎えた。試合はパナソニックとサントリーとの対戦。前売り券はすでに完売し、満員の観客がそこにはいた・・・はずだった。が、実際に集まったのは10,792人。前年度の開幕戦の人数11,162人を下回った。

日本ラグビー協会側の説明では、一般販売5,000枚、サントリー、パナソニックに9,000枚、FORALLチケットや年間パスポートが3,000枚、その他企業分が1,200枚らしい。

上記の割振りについてもサントリー側から異論が出ていたが、いずれにしても前売り完売で満員にならなかったというのは大きな問題だ。と同時に、一般販売が5,000枚しかなかったというのも驚きだった。

トップリーグは悪く言えば社会人リーグだ。一部プロ選手がいるとはいえ、基本的に企業がもつクラブ活動の一環である。そのため、企業向けにチケットが用意されていることはこれまでも明らかだった。それまでのトップリーグを見ても、ファンというよりは、企業から動員された人が多数という試合もよくある。企業によって、あるいは試合によって差こそあれども、一般のファンより企業向け動員に重点が置かれていたのは明らかだった。

それがそのまま見える化されたのがこの開幕戦でのチケット問題だ。周囲の変化にトップリーグ運営側、日本協会側がついていけなかったのである。

この点は大きなニュースとなった。が、その後はやや様相がおかしくなる。満員でないのが悪、かのような報道も続いてしまった。開幕戦のチケット問題は明らかに協会のミスだ。

ただ、それ以降は少なくとも当日券は発売されているという形に変わったし、2節で満員になっていない試合があった時に、「またも満員ならず」のような見出しは少し違うと感じた。確かに開幕戦こそ問題はあったものの、それ以降の試合の観客数はそれほど悪いとは思わなかった。例年であれば、もっと少なかったであろう試合に、いつもの倍のお客さんが詰めかけている。そんな試合も多かった。例えば第2節、京都・西京極競技場で行われた試合は、7,278人が詰めかけた。その中の1人から言わせてもらえば、西京極でこんなに人が入るのか、というのが実感だった。バックスタンドは人がほぼ埋まっている。こんなことはこれまでなかった。

開幕戦の問題と、それ以降の満員ではないという話題は別であったはずだ。

普段より多い観客は間違いない

開幕戦のマイナスはあったものの、トップリーグの観客数としては例年より明らかに多かったのは間違いない。これにはいくつかの理由が考えられる。1つは、新規のファンが増えたこと。2つめは、最近は離れてしまっていたラグビーファンが戻ってきたこと、3つめは、企業動員で来る人が増えたことだ。

1つ目はわかりやすい。W杯を見て、ラグビー見てみようと思ってくるようになった人だ。ラグビーのルールも細かくは知らないだろうが、それでも楽しいと思ってくれた人は、2回目・3回目ときてくれたであろう。

2つ目の要素も大きい。ラグビー場を見ていると、複数人で来ている集団の中で、「ラグビーなんて何年ぶりかなぁ」という声も聞こえてきた。ラグビーファンからすれば、ラグビー見に行こうと誘う機会は多い。ただし、それまでは正直興味を持たれることは少なかった。同様にかつてファンだった人でここ最近は見ていない人もこれだけ話題になったらもう一度見てみようという気になったのだろう。あるいは友人から誘われ、久しぶりに見ようかなという気にもなったのだろう。W杯以前はこういったファンが戻ってくる要素がなかったので、これは大きなことだったように思う。

3つ目の企業動員も個人的には大きいと思う。これまでは企業動員でくる人の中には明らかに嫌々来ている人もいた。「休みの日に動員されるなんて・・・」という思いで来ていた人もいるだろう。ただ、これだけラグビーが話題になると、そうでもなくなる。「あの話題のラグビーを見れる!」と思った人も多いのではないだろうか。企業動員で来た人も必死でルールを覚えようとしていた人も垣間みれたし、「あの選手が日本代表なんだよね」と話す姿も見てとれた。企業動員とはいえ、彼らも興味を持って見にくるようになった人たちだと思う。

過去最高の観客

さて、シーズンが始まって12月に入ると、1stステージもいよいよ終盤に。今シーズンはW杯があったことと、スーパーラグビー参戦が決まっていたのでトップリーグがかなり短期になっている。そのため、12月で1stステージが終了。それが終わるとトーナメント戦での順位決定戦が1月から始まることになっていた。

今シーズンに関しては、やはり明らかに観客数が増えていた。通常1万人を超える試合は年数試合しかないのだが、今シーズンは1万人を超える試合が続出。試合数は少ないにも関わらず、観客数は大きく増えたシーズンになった。

そして、過去最高の観客数の試合が生まれる。12月26日(土)の秩父宮でのゲームだ。この日の試合は2試合。第1試合がキヤノン-ヤマハ、第2試合がサントリー-東芝である。

元々第2試合はそれまででも1万人は入るような好カードな上、第1試合でヤマハ戦が組まれている。この日は朝から秩父宮に大勢の人が集まった。

トップリーグはメインスタンド中央に一部指定席はあるものの、それ以外はほぼ自由席だ。試合は11:40が第1試合であったが、朝から長蛇の列ができていたようだ。試合開始1時間前にはほぼ満席。これまでは見れない光景であった。

結果、この日の観客は25,164人。過去最高となった。開幕戦こそ大きなミスはあったものの、その後はしっかりと改善できたのは良かったと思う。

新たなシーズンに向けて

W杯後の盛り上がりの中迎えたトップリーグは過去最高の観客動員を記録し、終了となった。開幕戦こそ、まさかのミスがあったものの、そこからの改善も見られ、これまでとはひと味違うシーズンになったと思う。その一方で、ラグビー人気というよりは日本代表の選手の人気に留まっていたというのもある。

下部のチームであったり、代表選手がいないチームはそこまで多くの観客を集めた訳ではない。また、今年のトップリーグは日程など発表段階ではここまで盛り上がりを見せるとは思っていなかったであろう。旧態の制度のまま、急に人気が出てしまったのである。

逆に言えば、これからが大事だ。次のシーズンの日程も発表されたが、ここから先の取り組みが大事になる。幸いにもサンウルブズがスーパーラグビーに参戦しており、ラグビーの話題が途切れることはなくなった。リーグとして一部選手に限らず、全体として魅力あるものにしていくこと。その意味ではトップリーグの持つこれからの役割は大きいと思う。

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